ミルク感たっぷりのチョコレイト

ミルク缶とチョコレイトの別館ですよ

香水が苦手な女の香水探し

前書き

 

そもそも香水はあまり得意じゃなくて、たとえば化粧品売り場の匂いに「ウッ」となるタイプ。つけてると気分が悪くなることも多々。


だけど香水をつけるのってなんかかっこよくて憧れるし、たまに気に入った香りがあると感動する。あと瓶がカワイイので集めたい。そんなタイプが香水を探し求める記録です。

 

最近試した香水たち


【マルジェラ レプリカ】

●マッチャメディテーション

→一瞬だけめちゃくちゃ抹茶。トップとかいうレベルじゃなくてマジで肌に馴染むまでくらい。その後は甘いジャスミン。ホワイトチョコも入ってるらしいので甘さはそれかなあ。香りは結構すきなんだけど名前に対してあまりにもジャスミンの印象が強いのが納得いってない(?)甘々ジャスミンティーと言われた方が納得。


●バイザファイヤープレイス

→焼きマシュマロの匂いと、焼けた木の匂い。トップのいい匂いの中に違和感のある匂いが混じってて少し苦手。たぶん特定の何かが苦手なんだろうけど、なにかはわからず。肌に馴染んだあとはほっこりする木の匂いになる。


●ジャズクラブ

→ジャズクラブ行ったことないけど、ジャズクラブのイメージと言われて納得する香り。香りの好みうんぬんというより、単純に自分から香るのが違和感あった。男性向けらしいのでそのせいかな〜。でもこの匂いの女性いたらドキドキしちゃうな。かっこいい大人の匂い。


●レイジーサンデーモーニング

→これは間違いない匂いだと思う。清潔感全振りの爽やかな香り。好きな人が多いというか、嫌いな人が少なそう。嫌味がない。私は自分がまとうよりこの香り部屋とかで嗅いでたいわという感じなので購入はしてませんが人気なのは完全にわかる。


【イソップ 】


●フュイル

→いい匂いだけど肌につけるのは違和感。この辺でお香的な匂いの香水が苦手なことを理解する。お香が好きだから合うと思ってたんだけどなあ。イソップはタシットも試したんだけど同じ感じで合わなかった。


【ゲラン】


●ドゥーブルヴァニーユ

→トップがあんまわかんない。なんの匂いなんだろ?後々すごいいい匂いになってくるんだけど、後々のために出せる金額ではない。富豪の金額。ちなみにお店の人は死ぬほど優しかったし、ボトルの装飾はいろいろ選べるし、中身だけ補充もできるそうで、「一生モノ」への思いに感銘をうけた。いつの日かこのブランドで一本持ってみたい。富豪にはなれずとも。


【ディップティック】


●オーデュエル

→言わずと知れた人気のスパイシーバニラの香りなんですけど私の肌にはなんのバニラも薫らなかったです。あれ〜〜〜?ぼんやりスパイスのような匂いだけが残る…


●フィロシコス

→これめちゃくちゃすき。「香水!!」って感じのものが苦手で、どれならいけるのか?と探り探りだったのですがなるほどフィグ系もいけそう。


最初はビックリするくらい青臭い匂い、本当に植物の香りみたいな。でもその中に華やかなにおいが混ざってる。で、時間経つとミルキーな匂いになってめちゃくちゃサイコー。小分け使い切ったら買いに行こうかなと思ってます。

 

持ってるやつ


【マルジェラ レプリカ】


●ウィスパーインライブラリー

→初めて嗅いだ時あまりにいい匂いで衝撃を受けた。当時、お店で試していい匂いだったのにしばらく使っていると気分が悪くなるということを繰り返していたので香水を買うことにかなり疑り深くなってたんだけど、小さいやつを使い切るのが待ち遠しくなるくらいいい匂いだった。強めだから手首とかにはつけられないけど…。お腹とかにつけてる。

なんの匂いかと言われると迷う。たしかにバニラだし重たいんだけど甘々というとちょっと違う。古い紙の匂いというのもなんとなくわかる。どこを見ても秋冬用と書かれてるけど私はなにもわからないので年中つけている。胸元にだけど。そもそも名前が反則やと思わんか?(何?)


【demeter】

●ダークチョコレート

→ひたすらにチョコ。いつまでもチョコ。もうそれだけ。美味しいチョコ。ハッピーチョコ。ナッツ入りのチョコ。


【オゥパラディ】

●シトロン

→初めて使い切った香水。柑橘系だし、サイトの説明にも「フレッシュ!みずみずしい!」と元気いっぱいな旨が書かれてるんだけど、私はなんかちょっと切ないというかノスタルジーな気配をかんじていて、それが好きだった。真夏より夏の終わりとか秋口のイメージ。なもんで一年中つけてたな。

でも他の人のレビュー見ててもそんなこと言ってる人はいないので本当に人によるんだな。

 

終わり。

はじめてのふどうさんや

初めての不動産屋さんに行ってきたレポだよ!ちなみに家は決まってないので「初めての家探し迷ってる」みたいな人の参考にはならないよ!


【1】予約(木曜日)

homesとかSUUMOのアプリで部屋を探して、ここいいかも〜ってところを扱ってる不動産屋さんに電話をかけて予約したよ!複数の不動産屋さんがあって、なんとなく有名どころを外しつつ優良店と書いてあるところにしてみた。あと住みたいエリアに近いお店。電話でなんとなく希望を伝えておいたよ!

 


【2】来店(土曜日)

ドキドキしながら来店したよ。対応してくれた方、かわいらしい女の子といった感じで新人さんのようにも見えたので「大丈夫かな…」と不安だったんだけど、何を言っても丁寧に対応してくれるし、受け答えに嫌な感じがひとつもなくていい人だな〜と思ってたら店長だった。納得のホスピタリティ。


いろいろお部屋を出してくれるなか、思わぬ壁が現れた。その名もインターネット回線。テレワークあるし、私はゲームもするのでネット回線は割と重視してて、無料のでは無理だろうな〜回線ひかないとな〜は思ってたんだけど「指定の回線固定」とかあるの。それもオンラインゲーム向いてないことで有名なところのやつとか。えっもしかして貧乏人が一人暮らししたらスプラトゥーンやる権利ない?私ネットに詳しくないから何だったらイケそうとか判断がつかないんだよね…。思わぬところで選択肢が狭まってしまった。あとすごくいいな〜って思ったところがあったんだけど、入居者さんがいる関係で内覧できなくて残念だった。同じマンションの違う部屋を見れたらよかったんだけど、人気すぎてそれも無理だったんだよねえ。


【3】内覧

ああだこうだ言いながら3件内覧に行くことに。店長さんはやっぱり店から離れられないみたいで、そこからは別の人が案内してくれることになった。この方も若い女の子。

そしてこの方、あんまり私と相性がよくなかった!たぶん向こうもやりにくかったろうな〜。

 

<内覧の所感>

①希望エリア!周辺に緑もあってよかった。エレベーターにめちゃくちゃ住人に対する注意書きが貼ってあったし、変な匂いがしたのがすごく気になった。

あとまだクリーニングしてなくて、キレイな状態が想像しづらかった。エアコンが死ぬほど古かったけど(ちょ〜黄ばんでた)ああいうのって変えてもらえるんだろうか?でも収納が広くてよかった。


②スーパーと駅がめちゃくちゃ近い。大通りに面してるので帰るとき安心感がある。そしていちばん部屋が広い。シンクがメチャ小さい。これ自炊派でも耐えられるもんなの?ここから頭が痛くなりはじめて、詳細をあんまり覚えてない。

 

③一番最後で暗かったのに電気がつかなかったのでスマホライトで探検隊みたいにして内覧した。学校が近くて安心感がある。築年数が古いからか、洗面台の横に洗濯機がおける、みたいな普通の配置で落ち着く。バランスがいい。共用部分がいちばんキレイ。そんなに希望エリアではない。

 

【4】帰還

行きはどんな土地かを見たくて景色を眺めてたので気づかなかったけど、不動産屋さんがめちゃくちゃスマホを見ながら運転してることに気づいて死を覚悟した帰路だった。

 

ほかにも、不動産屋さんが私の靴を間違って履こうとしてめちゃくちゃ踏みつけたり(私の靴のサイズが小さいのでなかなか履けなかった)、そういう小さなトラブルがいくつかあって、ひとつひとつは大したことなかったんだけど、最後の部屋が電気つかなかったあたりで「あ〜ご縁なかったんだな〜」と思った。


二件目の後くらいから営業トークが本格的に始まって、まあそれは仕事だから仕方ないものなんでヘニャヘニャ聞き流してた。「みんなすぐきめてますよ」「迷ってたらいつまでも決まらないしいい部屋が逃げますよ」とか、そういう話術的なものを全パターン聞いた気がする。何言われてもその場で契約するなんてことはしなかっただろうけど、事前に「ほぼ確実に契約を焦らされるよ」とアドバイス貰ってたから心構えができてよかった。

 

途中で店長に電話して私があんまり決める気がないことを報告してたんだけど(一応車外に出て電話してたんだけど、めちゃくちゃ声聞こえてきた笑)、そのあと突然共感ムーブに入ってきてちょっと笑ってしまった。店長のアドバイスだったのかな?

 

【5】まとめ

今回行った三件ともそんなに悪くなくて、でも「ここだ!」っていうのはなかったかなあ。みんなそんなもんなのかな?どうですか?(聞くな) ウーン部屋が見つかるか不安だ〜〜〜

 

でも行ってみてすごく勉強になった!やっぱ直接みてみるもんだね〜。結構せかされちゃって記憶が曖昧だから、次は動画とか写真いっぱい撮ろうとおもう!次は希望エリアの不動産屋さんに行ってみようかなあ…。

100まんねんらぶないぬ

今日でわたしのいぬが物理的に見えなくなって三年が経つ。よくある表現として「虹の橋をわたる」というのがあるけれど、いぬの思い出がわたしの中に散らばりすぎてとても虹の橋を渡ったとは思えないのでこんな風にいうね。

 

いぬはわたしが小学生のときにやってきた。当たり前だけどちびで、たぬきみたいな顔をしていた。ミニチュアダックスなんだけどワイヤーとロングの合いの子すぎてワイヤーでもロングでもない毛並みだったうえに、鼻が平均より短かったせいだ。

 

ちびのいぬは肉球がぷにぷにだったけど、散歩に行くにつれカチカチになった。初めての散歩のことをまだ覚えてるけど、めちゃくちゃ怯えてぜんぜん動かなかったのに、すぐにいぬらしく散歩が大好きになった。前述したように毛並みがめちゃくちゃで鼻が短かったので道端で「それ何犬?」とよく聞かれて答えては驚かれてた。そんないぬのめちゃくちゃな毛並みがわたしはめちゃくちゃすきだった。

 

いぬはわたしの部屋と廊下の境目でよく寝ていた。ドアがしまってるときはドアの前で転がっていて、開けるとぶつかってあぶなかった。なんでそんなところにいるんだろう、といつも思ってたけど、わたしのことが好きだったのかもしれない。わたしはいぬが好きだ。

 

わたしはいぬの夜ご飯の係だった。わたしが食べ終えたあとにいつもご飯をやる決まりで、どうやって判断してるのかわからないけど、わたしがご飯を食べ終えるといつもわたしの座ってるイスに体当たりして、キュンキュン鳴いて催促してきた。「うるさ〜!!!」と口喧嘩をしながら餌をあげていた。

 

いぬは一度いなくなったことがある。いぬは脱走の達人で、ドアの隙間から弾丸のように飛び出していってしまった。いつもはいぬらしくちゃんと帰ってくるのにそのときはなかなか帰ってこなくて、張り紙などをして必死で探した。真相は近所の飲食店の人が捕まえていたのだった。
なぜ捕まえていたという過激な表現してるのかというと、いぬが人なつこいから看板犬にしようとしたらしいが、飼育してみると懐かなくなったので返すわ〜という経緯があるからだ。キレそう。いまだにはらわたが煮えくりかえりそうなくらいむかつく。迎えにいくといぬは散歩に行くよといったときよりも激しくわたしに飛びついてきた。

 

こんなことがあったものだから、次にいぬが脱走したときはそりゃもう必死で追いかけた。追いかけたって追いつけるわけがない。逃げる時のいぬはマッハなのだ。その結果ミラクル大回転をかまし、わたしは前歯を失ったのだが、この話は長くなるのでぜひ鳥貴族などで聞いてほしい。

 

いぬの話に戻る。いやずっといぬの話だけど。

いぬの具合が悪くなったのは年が明けてからだった。すこしずつ食欲がなくなった。散歩は相変わらずはしゃいでいたので、歳のせいかなあと話していた。たぶん、家族全員しっかり考えないようにはしてたけど、この時点でその予感はあったと思う。

 

最初はドッグフードをふやかすなり野菜を混ぜたり缶詰にしたりと工夫すると食べてくれてたいぬだけど、どんどん食べる量が少なくなっていく。一月末、ついに病院に連れていった。先生はすごくいい人だった。わたしが中学生のころ職場体験をさせてくれたところでもあって、本当にいい先生なので、もう助かりませんなどとは言わなかった。ただ、そういう意味のことを長く長く話してくれた。

 

病院からかえってくると、いぬは極端に弱ってしまった。昨日まではしゃいでいた散歩も行けなくなった。注射や検査がこたえたのかもしれない。それにしたってあんまりな弱り方だった。病院なんか連れて行かなきゃよかった。連れていかなくても後悔しただろうけど。

 

当時、わたしはダークネス暗黒企業を退職したところだったので、いぬとの最後の日々をいっしょに過ごすことができた。
最後の日々、なんていうと穏やかだけど、きょう死ぬかもしれないと思いながら過ごし、あした死ぬかもしれないと思いながら眠る、そんな苦しい日々だった。

 

病院に行ったのは1月28日なので、数えてみるとたった9日しかないんだけど、この期間は本当にいろいろなことを考えたな。

 

いぬは間もなくろくすっぽ歩けなくなり、お気に入りの場所でずっと眠っていた。見るからに衰弱しているのにお気に入りの場所は変わらなくて、それがまた泣けた。いぬはときたまに痙攣した。そのたび、わたしは今までにないくらい色の濃い「死」を感じ、怯えていた。

 

そんな日々のなか、気付かされたことがある。

 

家事を終えて一息ついていると、いぬが痙攣していた。また呆然とそれを見守っているうち、ご飯のたける匂いがした。こんなときなのに、すごくいい匂いだった。たとえいぬが死んでもご飯は美味しく炊ける。信じられなかったけど、どうしようもなく現実だった。

 

冬にしてはあたたかい夕方で、窓からはやわらかい陽の光が差し込み、子供達が公園で遊ぶ声がワアワアと聞こえ、キッチンではご飯が炊けている。そんな完璧にしあわせ、みたいな空間でいぬが死にそうなのを見ているじぶん。

 

わたしはそのとき、たぶん初めて、死ぬということの端っこについて理解した。

 

死ぬということは、生きることと同じことで、ぜったいに取り返しがつかないのに、死ぬほどかなしいのに、当たり前のことなのだ。

 

現に、いぬの質量が失われてからもわたしはすくすくと生き、年々幸せの最高記録を塗り替えている。

 

「●●が死んでも世界は続いてく」という表現は、あらゆる創作物で見たことがある。この表現がわたしの心に響かなかったのは、ありきたりな表現だからではなくて、わたしの経験が足りなかったからだ。

 

痙攣するとたまに尻尾が揺れた。もういぬが以前のようにしっぽを振るのを長いこと見てなかったわたしは、痙攣だとわかっているのに嬉しくなってしまって、心が潰れそうだった。

 

3年前の今日、そうなったいぬを見つけたのは父だった。朝起きたときは息をしていたけれど、支度を済ませたら息をするのをやめていた。そのタイミングが家族が全員いるときに訪れたのはただの偶然に違いないけど、親バカなのでやさしいなと思ってしまう。

 

いぬを燃やしたのはその日のうちだった。
家族全員総出だったけど親二人は仕事どうしたんだろう?全然覚えてないや。豪華な祭壇は、うちの犬にまったく似合っていなかった。ひごろ、父の着古したパジャマやわたしの毛玉まみれの電気毛布を寝床にするいぬなのだから当たり前だ。ありがたいお言葉を聴きながら、そんなことばかり考えていた。

 

次の日、父がいぬの骨を受け取ってくれたのだけど、第一声が「●●帰ってきたで」だったので喉がつまった。それがすべてだともおもった。いぬは、虹の橋など渡っておらず、星はおろか天使にすらなっていない。うちのいぬはずっとうちにいる。

 

このころ、不思議な体験をした。
わたしは「流れ」とか「運」はそこそこ信じてるけど、幽霊の類はみたことがなかったのでいまいち信用していなかった。死んだらおわりなんて寂しいので、居たらいいなあとは思っていたけれど。

 

だけど、いぬの質量がなくなった次の日、信じられないくらいいぬの存在を感じた。寂しいから…とかではなくゾワゾワ寒気がして輪郭が見えそうな勢いだったので、さすがにあれはそうだったのではないかと思っている。
家族には「寂しいからやろ」と言われたけれど、次の日も寂しいのにそのゾワゾワな感覚はなかったので、やっぱり奴だ。いぬだ。

 

いぬが物理的にいなくなってからしばらく、自分をめちゃくちゃ責めた。いぬは、もっと幸せないぬになれたに違いないと思ったからだ。

 

だけど、ボロボロに泣きながらいぬの動画を眺めていると、いぬがわたしのことを好きだったことにどうしようもなく気づいてしまう。手を差し出したら撫でてくれと頭を擦り寄せてくる。それどころか、目があっただけでお腹を出してくる。そんないぬだった。

いぬがわたしのことを好きだったと、わたしはいぬに触れなくなってから初めて気がついた。ちゃんと撫でてあげられるうちに気づいておけばよかったけど、いまとなっては仕方がないことだ。

 

うちの家やわたしは至らないことだらけだったけれど、この至らない家に生まれたわたしが案外しあわせに生きてるように、いぬも案外しあわせだったんだと思う。

 

質量がなくなったので、いぬの写真や動画が増えることは2度とない。わたしが生きていると新しい写真や動画が増えていくのでどんどん奥に追いやられていく。

 

でも、変わらずずっと好きだな。3年たってもせかいでいちばんラブないぬだな。そんなことを思いながらアホみたいにベソベソ泣いて、明日もまた、いぬの質量のない世界をハッピーに生きていくことにする。

窓の話

いろいろあって私の部署に新しく置かれたコピー機はのろのろと動く。なもんで、出力してすぐに席を立ってしまうと必ず待ち時間ができる。私は毎度学ばずに立ってしまう。コピー機から私の席は数歩しかないから戻ればいいんだけど、なんとなくコピー機側にある窓をのぞいてしまう。割と広い窓台のせいで、窓の下を覗くとつんのめるけど、のぞいてしまう。

 

私の会社があるのは梅田のグランフロントでも東京の丸ビルでもないので都会の壮観な景色が見えるわけもなく、しかしど田舎でもないからには目の前は高い建物ばかりで、美しい夜景や夕焼けが見えるわけでもない。

 

ただ、下を覗くと、すごく高い。死ぬほど高いわけじゃないけど、まあまずエレベーターに乗らないとこの高さには来ないよね、落ちたら死ぬよね、というくらいの高さ。すごく高い。

窓をのぞく理由はただそれだけだった。

 

今日もそんな風にのぞいていると、上司になにしてるん、と話しかけられた。すごく困った。窓から見えるイルミネーションを見てるのかと問われた。たしかにそれも綺麗だなと思ったけど、私は高いからのぞいているだけなのだった。

 

いつも思うのだけど、こういうとき、なんて答えたら「変」じゃないんだろう。明確な理由がないことを私はしょっちゅうしてしまう。いや、私には明確に、高いから見てるっていう理由があるんだけど、明確じゃないと思われても仕方ないとも思う。だって、高いところが好きなわけじゃない。私は高いところが苦手だ。友達にパラグライダーに誘われたときは死んでもやりたくないと断った。透明なエレベーターに乗るときはいつもドア側をひたすら見るか、目を瞑っているほどだ。

 

曖昧に答える私に、上司は「飛び降りたいんか」と笑った。(誤解のないように言うけれど、この上司は誰にでもいつだってこの調子だ) 「絶対嫌です」というと、上司は身近に起きた飛び降り案件について語りだした。冗談みたいな話だけど、この上司、今日は親戚の葬式に出て休めばいいのに無理くり出社してきた。喪服のまま。いい式だったといっていたから、さほど悲劇的なものではなかったのだろうけど、喪服で飛び降りについて語る姿はなんだかひどく文学的だった。

 

ところで、私が窓をのぞく理由はもちろん飛び降りたいからではない。落ちることを考えるだけでぞっとする。ジェットコースターもなるべく乗りたくない。このビルの窓は内側から開けることができない仕組みで、だからこそ見てると言えた。もし簡単に開くなら私は覗き込んだりしない。散々いってるけど、高いところが怖いから。これも散々いうけど、私が窓をのぞいてるのはすごく高いからなのだ。

 

変だと思われない方法をいつも探して、怯えながら生きている。でも本当はわかってる。窓をのぞかなければいい。そうすれば誰からもなにもいわれることがない。

 

でも明日、なにかを出力するときには、私はきっと窓をのぞくと思う。すごく高いから。ひょっとすると、私は自分が思っているよりも、豪胆な性格なのかもしれなかった。

いちばん眠いときにねむりたい

 

「いちばん眠いとき」に寝たことがありますか?


お昼にご飯を食べたあととか、夜寝る前とか、眠気を感じるときって人によっていろいろあると思うけど、私の考えでは、「いちばん眠いとき」ってやっぱり学校や会社に行く日の朝とか、明日の朝一から面接があるのに履歴書を書いてない夜とか、そういう「絶対寝てはいけないとき」にだけ現れるスペシャルタイムなのです。


私は毎朝、目が覚めるたびにこれから自分が起きるビジョンがまったく見えないほど眠い。たまに「それは無理」って言いながらスマホを投げるくらいに眠い。こんなにも眠いのに、いまだに眠さを理由に会社をさぼったことも遅刻したこもとない。


だから、私はいまだに「いちばん眠いとき」に寝たことがない。


学校を眠くて休んだことはあるし、土日なのに平日と勘違いして起きて焦って休みだったから二度寝したなんて経験はそりゃもう何度もある。これらは一見いちばん眠いときの様相を呈しているけど、どっちもぜんぜん違うのです。学校は休んでも問題が少ない日にしか休んでないし、勘違いは気づいた瞬間からもう寝ていいって気づいてる。寝てもいいんだとわかっているとき、それはもういちばん眠いときじゃなくなってしまってる。


いつか、一回でいいから、いちばん眠いときに眠ってみたいなあ。


とはいえ、そんなことしてしまったら一ヶ月くらい後悔しそうだから、ずっと眠ってみたいなあって言っている人でいるね。

 

 

 

 

 

カナブンとマーブルチョコって似てない?

昨日の朝、出勤準備でバタバタしてるときにリビングのフローリングにカナブンを見つけた。一往復目は無視したけど、二往復目で「ここでこいつを野放しにしたら、これから先一生カナブンに怯える人生を送ることになるのでは?」と思いつめ、捕獲することにした。でもカナブンはこわい。虫は怖いものだけど、カナブンはマーブルチョコのようなコーティングをされているので、潰れたときのことがたやすく想像できてよりいっそう怖いとおもう。


ティッシュを無駄に何枚も引き出して、カナブンを包み込む。持ち上げるとき、掴み損ねてたらどうしようと考えると怖すぎて息が荒くなった。私は頭がおかしいのでこんなにビビってるのに掴んだあとひっくり返して様子を確認しようとした。虫の裏側なんか見えたら発狂するに決まってるのにやってしまう。やらない方がいいことをやってしまうときってない?ないかな?まあ氷の上に立つように危なげなことをしようとしていた小松未歩だけは私の味方だ。ちなみにテッシュで包みすぎてカナブンは見えなかった。ベランダを開けてカナブンティッシュドームを投げた。やすくんみたいに優しく外に放つということは私にはできない。急いで窓を閉めてから確認すると、カナブンは転がっていた。


私はカナブンを殺したのか。

そう思うとめちゃくちゃ動揺した。カナブンに生きててほしかったわけじゃないけど、少なくとも殺したいわけじゃなかった。少ししてからのぞいてもやっぱり転がっていたので私がカナブンを殺したのか…と思って落ち込みながら朝の準備を進めた。


しばらくしてもう一度ベランダを確認すると、さっきまで転がっていたカナブンが立っていた。立っていた?正しいカナブンのスタイルを取っていた。正位置のカナブンだった。それをみて、殺してなくてよかったと心底思った。私は生まれかわってもカナブンに生まれたくないとおもった。外にでたら腹が立つほど快晴で、極め付けにセミが鳴いていた。セミにも生まれ変わりたくないと思った。人間に生まれてよかった。